令和7年度内谷中 合唱祭特集 ― “内谷発声”と“有志合唱”の舞台裏 ―


10 月 14 日に令和 7 年度の合唱祭が開催されました。

子どもたちの美しい歌声が響き渡り、
多くの保護者や来賓の方々が来場して大盛況のうちに終了しました。

今回、音楽教員の有村ひづち先生に、
内谷中学校の生徒たちがどのように発声を身につけていったのかを
テーマにした『内谷発声』ができるまでや、
今年初めて実施された『有志合唱』についてのお話を伺いました。


内谷発声ができるまで― 音楽の楽しさを感じる「声出し」づくり ―

私自身が学生時代に歌の練習をしていた頃、毎日行っていた「声出し(発声練習)」を
もっと楽しく、続けやすくできないだろうかと考えていました。
当時は、ビリー・ジョエルの名曲『Everybody Loves You Now』に合わせて
呼吸法やストレッチを行っていました。
音楽に合わせて体を動かすとテンポが一定のため、
「今日こっているな」「横隔膜の動きが鈍いな」といった体の変化に気づきやすく、
曲の持つエネルギーが自然とやる気を引き出してくれます。
そんな経験から、「授業の中でも音楽に合わせて声を出す時間を作りたい」と
思うようになりました。

▶曲選びのポイント
発声練習で使用する曲を選ぶ際には、次の 5 つのポイントを意識しています。

  1. 教育的意義
  2. 音高(音域)
  3. ポップなサウンド
  4. 繰り返しの多い歌詞
  5. テンポ(BPM)は 120 程度

昨年度はカーペンターズの『Sing』を使用しました。
歌詞のメッセージ性が高く、テンポや雰囲気も発声練習に適していましたが、
やや高音が多く、歌詞を覚えるのが難しいという課題もありました。
そこで今年度は、スリー・ドッグ・ナイトの『Joy to the World』を採用しました。
明るくノリの良いサウンドで、生徒たちにも親しみやすく、
音域や歌詞の覚えやすさの面で改良が見られました。
一方で、教育的な意義という観点では『Sing』の方が優れているかもしれません。

このように、①〜⑤のバランスを取ることは簡単ではなく、
毎年悩みながら選曲しています。
たとえば、イタリア語の古典歌曲は教育的にも音域的にも優れていますが、
テンポや親しみやすさの点で難しさがあります。
逆に、J・ガイルズの『Centerfold』のようにリズムや歌詞が魅力的でも、
教育的意義という観点で慎重な検討が必要です。

▶これからの「声出し」に向けて
来年度も白川先生と相談しながら、
生徒たちが楽しく取り組める発声曲を探していく予定です。
「声出し」は単なるウォーミングアップではなく、
音楽を通して自分の体や心と向き合う大切な時間です。

これからも、生徒一人ひとりが「音楽って楽しい!」と
感じられる授業づくりを大切にしていきたいと思います。
どうぞご期待ください。


有志合唱 ― クラスの枠を越えて響き合う歌声 ―

内谷中学校の合唱祭は、長年にわたり
『最優秀賞を取るためにクラスの団結を高める行事』
として位置づけられてきました。
一方で、「賞を取ったクラスが絶対的に優れている」という意識が生徒や教員の間に広がり、
音楽本来の楽しさや多様な価値が見えにくくなっているのではないかという課題も感じていました。
もちろん、音楽に優劣をつけること自体が悪いわけではありません。
音楽に真剣に向き合う人にとって、コンクールや評価は成長の糧になります。
しかし、中学校の合唱祭は“競う場”であると同時に、“音楽を共有する場”でもあります。
生徒一人ひとりが異なる思いで音楽と向き合っており、
聴く人によって感じ方もさまざまです。
たとえ審査員の評価と一致しなくても、自分たちの演奏に「良かった」と感じられたなら、
それも大切な経験です。

賞の発表とそのあり方
合唱祭の「賞」については、「結果を重く受け止めすぎない雰囲気にしたい」との考えから、
発表を厳粛に行うのではなく、温かく盛り上がる形にしました。
また、クラスの男女比の偏りや、今後1学級 35 人となる国の方針など、
編成上の課題も見据えながら、「賞なし」での実施も検討しました。
しかし、生徒たちからは「わかりやすい目標が欲しい」という声が多く寄せられ、
「絶対的な順位ではない形で評価を受ける経験も大切」との意見もあり、
賞のある形を継続することにしました。

「有志合唱」誕生
こうした議論を経て、校長先生・白川先生と相談のうえ、
新たな試みとして「有志合唱」が生まれました。
この取り組みは、「クラス対抗」や「学年ごと」といった枠を越えて、
歌うことを純粋に楽しみたい生徒が集まる場として企画されたものです。
立花さん(合唱祭実行委員長)が語ってくれた「ノーサイド」という言葉の通り、
勝敗を越え、音楽でつながる新しい形の合唱を目指しました。

放課後練習と選曲
放課後 50 分の練習を 5 回という限られた時間でしたが、
歌が好きな生徒が集まっていたため、音取りもスムーズに進みました。
新人戦前や受験期など忙しい時期にもかかわらず、
放課後の時間をやりくりして参加してくれた生徒たちには、心から感謝しています。

曲は、混声四部合唱の名曲「大地讃頌」と、
メッセージ性の強い「あなたのことを」の 2 曲を候補として実行委員に聴いてもらい、
多数決の結果「あなたのことを」が選ばれました。
「あなたのことを考えると、どうしてこんなに元気が出るんだろう」
——話し言葉のような歌詞を、語りかけるように歌ってほしいと伝えました。
その思いは見事に歌声に表れ、ホール全体を温かく包み込みました。

ーおわりにー
「有志合唱」は、学級対抗の枠を越え、音楽の本質である
“共に響き合う”喜びを感じる貴重な機会となりました。
来年度以降の実施は未定ですが、
この取り組みを通して生徒たちが見せてくれた笑顔と歌声は、
何よりの成果だったと感じています。
音楽がつなぐ心の輪が、これからも内谷中に広がっていくことを願っています。

音楽教員:有村ひづち先生より


合唱祭を通して、生徒たちの努力や音楽への取り組みを知り、
学校行事としての意義をより深く理解することができる機会となりました。
有村先生ありがとうございました。



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